パソコンネック―首の痛みからeスポーツまで
コンピューターは今ではほとんどの職場で導入されており、パソコン画面を前にしたキーボード操作は多くの職種で必須の作業になっています。
コンピューターのき―ボード操作による肩こりや首の痛みで、椎間板ヘルニアや頚椎症などの原因が明確でないものを総称して頸肩腕症候群と呼びます。最近はパソコンネックなどとも呼ばれる コンピューター作業による首の痛みにはいわゆるストレートネックがかかわることが多いです。
人間の背骨はもともと前後の彎曲を持っており、頸椎には前方に凸の彎曲(前弯)があります(図)。ところがパソコン画面に集中するあまり頭が前方に移動すると、頸椎は前弯を失ってまっすぐになったり、後方に凸の彎曲を有するようになります(図)。この状態がストレートネックで、首の後ろの筋肉が緊張して肩こりや痛みの原因になります。 ただし、もともとストレートネックの首の形をした人が正常人の20~35%に存在するとも報告されていますので、ストレートネックがすべて悪いわけではなく、「頚椎の前方凸の弯曲を持つ人が、頭を突き出す姿勢を続けた結果ストレートネックとなった場合に首の痛みを起こす」ということです。
パソコン操作による障害にはパソコンネックのほか、手根管症候群や腱鞘炎があります。
▶ 腱鞘炎については「手術をしない腱鞘炎・ばね指の治療」へ
手根管症候群
手根管は手首の手のひら側にあり、屈筋腱とともに正中神経という太い神経が入っています(図)。手根管内の腱が腫れると正中神経が圧迫され、手のしびれや知覚障害、親指の筋力低下などが起こります。 パソコンのキーボード操作では手首を上に曲げる(背屈する)動作が多く、これにより手根管内圧が上昇すると正中神経を圧迫し、手根管症候群を起こします。この予防のためには、手首の下に台を置いて、手首の曲がりを減らすと効果的です(図)。
eスポーツ外来
当院にはeスポーツ選手のためのeスポーツ外来を開いています。
コンピューターゲームで技を競うeスポーツは、究極のパソコン動作によりさまざまな障害が生じます。前述のパソコンネックや手根管症候群、腱鞘のほかに、指が勝手に動いてしまうジストニアも問題になっています。
eスポーツ選手のジストニアはコンピューター操作の時だけに発症する特徴があり、演奏中だけに症状が出る音楽家のジストニアに似ています。